- おに
- おに【鬼】※一※ (名)〔姿が見えない意の「隠」の字音「おん」の転という〕(1)(天つ神に対して)地上の国つ神。 荒ぶる神。(2)人にたたりをする怪物。 もののけ。 幽鬼。(3)醜悪な形相と恐るべき怪力をもち, 人畜に害をもたらす, 想像上の妖怪。 仏教の影響で, 夜叉(ヤシヤ)・羅刹(ラセツ)・餓鬼や, 地獄の獄卒牛頭(ゴズ)・馬頭(メズ)などをさす。 牛の角を生やし, 虎の皮のふんどしをつけた姿で表されるのは, 陰陽道(オンヨウドウ)で丑寅(ウシトラ)(北東)の隅を鬼門といい, 万鬼の集まる所と考えられたためという。(4)放逐された者や盗賊など, 社会からの逸脱者, また先住民・異民族・大人(オオヒト)・山男などの見なれない異人をいう。 山伏や山間部に住む山窩(サンカ)などをいうこともある。(5)子孫の祝福に来る祖霊や地霊。(6)死者の霊魂。 亡霊。
「護国の~となる」
(7)(ア)人情のない人。 冷酷な人。 (イ)(「心を鬼にする」の形で)気の毒に思いながらも冷酷に振る舞うこと。(8)非情と思われるほど物事に精魂を傾ける人。「文学の~」「仕事の~」
(9)鬼ごっこや隠れんぼなどの遊びで, 人を探しつかまえる役。(10)貴人の飲食物の毒味をする役。 おになめ。 おにくい。 鬼役。「鬼一口の毒の酒, 是より毒の試みを~とは名付けそめつらん/浄瑠璃・酒呑童子枕言葉」
※二※ (接頭)名詞に付く。(1)無慈悲な, 冷酷な, などの意を表す。「~ばばあ」「~検事」
(2)強くて恐ろしい, 勇猛な, などの意を表す。「~将軍」
(3)異形の, 大形の, などの意を表す。「~百合(ユリ)」「~やんま」
~が住むか蛇(ジヤ)が住むか(建物の中や人の心の中などに)どんな恐ろしいものや恐ろしい考えがひそんでいるかわからない。~が出るか=蛇(ジヤ)が出るか(=仏(ホトケ)が出るか)〔昔, 傀儡(カイライ)師が胸にかけた機関(カラクリ)箱から人形を取り出す前に言った言葉という〕前途の運命の予測しがたいことのたとえ。~が笑・う現実性のないことをからかっていう語。「来年のことを言うと~・う」
~とも組・む(1)勇猛なさまのたとえ。(2)勇猛ではあるが, 物の情を解しない人のたとえ。~に金棒(カナボウ)〔ただでさえ強い鬼に金棒を持たせる意から〕強いものがさらに強さを加えること。~に衣(コロモ)(1)表面はおとなしく見えるが, 内心に恐ろしいものを秘めていることのたとえ。 狼(オオカミ)に衣。「形は出家になれども, 中々内心は皆~なり/浮世草子・織留 3」
(2)〔鬼は元来裸なので〕不必要なこと, また不似合いなことのたとえ。~の居ぬ間に洗濯(センタク)気兼ねする人やこわい人のいない間に, したいことをしたり, 息ぬきしたりすること。 鬼の留守に洗濯。~の霍乱(カクラン)〔「霍乱」は暑気あたりの意〕いつも非常に健康な人が, 珍しく病気にかかることのたとえ。~の首を取ったよう(大したことでもないのに)大変な功名・手柄を立てたように思って喜ぶさまのたとえ。~の空念仏(ソラネンブツ)無慈悲・邪悪な人間が, 表面上は慈悲深くよそおうこと。 また, がらにもなく殊勝にふるまうこと。 鬼の念仏。~の女房に鬼神(キジン)がなる鬼のような冷酷・残忍な夫には, それと釣り合う同じような女が女房になる。 似たもの夫婦。 鬼の女房に鬼神の亭主。~の念仏(ネンブツ)「鬼の空念仏(ソラネンブツ)」に同じ。~の目にも涙冷酷無情な人間でも, 時には情に感じて慈悲の心を起こすことのたとえ。~は外(ソト)福は内(ウチ)⇒ 福は内鬼は外(「福」の句項目)~も十八番茶(バンチヤ)も出花(デバナ)〔醜いとされる鬼も年頃になれば美しく見え, 番茶でもいれたばかりのときにはよい香りがする意から〕女の子はだれでも年頃になれば, それ相応にきれいに見え, 魅力もそなわるの意。 古くは男女いずれにもいった。~を欺(アザム)・く〔「あざむく」はしのぐ, の意〕ひどく力が強い, あるいは容貌(ヨウボウ)が恐ろしいので, 鬼かと思うほどである。「~・く国性爺/浄瑠璃・国性爺合戦」
~を酢(ス)にして食・う恐ろしいものを何とも思わない。 鬼を酢につけて食う。「鬼を酢にさして食はんずる景気なり/盛衰記 37」
Japanese explanatory dictionaries. 2013.